アップルパイやパンプキンパイ、ミートパイなど、パイはデザートやキッシュとして、またはお食事の一部としても楽しめる万能な料理です。 しかし、「外見は見事に焼き上がっているのに、切り分けてみたら底部分が生焼けだった」という経験は、誰にとっても残念なものです。
私が子供の頃、何度か母親がアップルパイを作ったことがありましたが、外側はしっかりと焼けているのに、内部はまだ生っぽく粘り気が残っていたという状況に遭遇したことがありました。
この記事では、パイ生地の生焼けに関する事について解説します。
生焼けのパイ生地を食べても大丈夫?
生焼けのパイ生地が消化に与える影響について、一概に「消化不良や下痢を引き起こす」とは言えないものの、警戒は必要です。具体的には、パイシートを構成する成分には小麦粉、マーガリン、バター、塩などがあり、これらは未焼成状態で摂取しても、直接的に消化に悪影響を及ぼすわけではありません。
しかし、小麦粉は本来、加熱調理することで消化しやすく、また味わいが増す食材です。未加熱の状態では、
・味が損なわれる
という理由から、避けた方が良いとされています。
さらに、小麦粉には、製造過程で除去される不純物は少ないものの、殺菌されていないため、微生物が付着している可能性があります。これらは加熱によって死滅しますが、未焼成ではそのリスクが残るため、注意が必要です。
それでも、未焼成パイシートを食べたからといって、すぐに消化不良を起こすわけではありません。個人の体調や消化器官の強さに左右されるため、状況を見て判断することが大切です。
パイ生地が生焼けかどうかを判断する方法は?
パイシートが中途半端に焼けてしまったかどうかを見分ける方法について説明しましょう。
まず、パイシートの表面を観察し、「焼き色」の有無を確認します。均一な金茶色に仕上がっている場合は、適切に焼かれていると判断できます。
次に、フィリングによって隠れているパイシートの底部分のチェック方法ですが、型からパイシートが容易に離れる場合、生焼けの心配は不要です。
また、ナイフなどを使って型とパイシートの間に挿入し、すんなりと離れるかどうかを試してみてください。これが上手くいけば、十分に焼き上がっている証拠です。
パイシートが生焼け状態になる主な理由として、フィリングの水分がパイシートに染み出し、加熱が不十分だった場合が考えられます。
これらの点を理解し、チェックすることで、パイシートが適切に焼けているかどうかを判断する手助けになります。覚えておくと、焼き菓子作りがさらに楽しくなるはずです。
パイの生焼けを防ぐためのポイント
パイシートにフィリングをのせて焼くと、フィリングの水分がパイシートに染み込んで温度が上がりにくくなり、生焼けになることがあります。
具体的には、
・フィリングが熱いうちにパイシートに乗せられた場合(熱いフィリングはパイシートに水分が染みやすくなります)
・フィリングを乗せた後、すぐに焼かなかった場合(待機中にパイシートにフィリングの水分が染み込んでしまいます)
このような場合に生じる可能性があります。
生焼けを防ぐには、
・フィリングが冷えた後にパイシートに乗せる
・パイシートにフィリングを乗せたらすぐに焼く
が挙げられますが、最も確実なのは「フィリングを乗せる前にパイシートを空焼きすること」です。
空焼きの手順は以下の通りです。
(2)上にホイルをかぶせる
(3)ホイルの上に重しを置く
(4)180℃のオーブンで約10〜20分焼く
これにより、フィリングの水分が染み込まず、生焼けを防ぐことができます。
ただし、空焼きしたパイシートが熱いうちにフィリングをのせてしまうと、パイシートの熱がフィリングの水分を引き出してしまいます。そのため、しっかりと冷ました後にフィリングを乗せるようにしましょう。
また、重しはパイシート用のものがありますが、手元にない場合は乾物の豆などでも代用できます。パイをよく作る場合は、専用の重しを用意することをおすすめします。
パイシートが生焼けの原因「火が弱い」
パイシートの生焼けが発生する一因として、火力が不足している可能性が挙げられます。これは一見当たり前のことですが、加熱力が不十分になる理由には、使用しているオーブンがガス式か電気式かによっても差が出ること、さらにはオーブンのモデルによって加熱力に細かな差異や特性が存在することが関係しています。
レシピに記載された通りに加熱しても、所有しているオーブンの特性によっては、必要な加熱力が得られないケースがあります。
したがって、「オーブンの特性を把握しておく」ことが非常に重要です。「レシピで指定されている加熱時間を基に、自宅のオーブンではどのくらい調整する必要があるか」を理解することが、経験を積むことで可能になります(失敗を重ねることもありながら)。
また、自宅のオーブンの取扱説明書や公式サイトにパイシートを使用したレシピが掲載されていれば、それを参照するのも良いでしょう。
さらに、オーブンを使用する際には、以下の点も考慮する必要があります。
オーブン内の上段、下段、中段で熱の伝わり方や強さが異なるため(上段で焼くと上部が早く焼ける傾向があるため、底部をしっかり焼きたい場合は下段が適している)
オーブンのサイズが適切であること(オーブンのサイズに対してパイが大きすぎると、均等に加熱されずに生焼けの原因となる)
そして、何よりも「予熱」の重要性を忘れずに。使用しているオーブンの特性を理解し、加熱時間や温度設定の微調整を行うことで、パイの不完全な焼成を避けることができます。
生焼けしたパイシートを再び焼くことは可能か?
万一、パイシートが十分に焼けていない場合、再焼きは可能かという疑問に対しては、安心してください生焼けす。「未熟なパイシートを再び焼くことはできます」。
未熟なパイシートを再び焼くための手順は複数存在します・・
焼き直し方① 温度調整で再焼き
簡単に言えば、温度を少し高めに設定して、再度焼いてみるのが良いでしょう。
ただし、食材の表面が焦げる恐れがある場合は、アルミホイルで覆うことをお勧めします。
焼き直し方② オーブンの下段で再焼き
オーブン内の上部は熱が直接当たりやすいため、焼き物の底面への熱の伝わりにくさが問題になることがあります。特に、フィリングが詰まったパイのように、底面が生焼けになりがちな場合、オーブンの下段に配置することで、上からの直接的な熱を避けつつ、底面にしっかりと熱を伝えることが可能です。
この方法は、焼き直しの際に底面に焦点を当てるものですが、下段に置いても加熱が心配な場合は、グリル網を使用してその上で焼くという手もあります。ただし、使用するオーブンの仕様によっては対応できないこともあるので、使用前には必ず確認してください。
焼き直し方③ 直接天板に置いて再焼き
型を使用してパイシートを焼いた後、中が十分に焼けていないことに気づいたら、型から取り出し、天板の上に直接置いて再度焼く方法を試してみてください。この時、パイの上部をアルミホイルで覆うと、焼き加減が良くなります。
通常、型を使うと熱の伝わり方にムラができやすく、生焼けの原因になりがちです。もし、レシピ通りに型に入れてパイシートを焼いても、繰り返し生焼けになる場合は、直接天板に置いて焼く方法に挑戦することをおすすめします。焼く際の時間や温度は、焼き具合を見て適宜調整してください。
サクサクなパイシートを焼きたい
パイシートの生焼けの判断基準や、焼き直し方法がわかってきましたが、ここでさらにワンランクアップ!
パイシートをサクサクに焼き上げる方法を、ご紹介したいと思います。
これは、パイシートの生焼け防止に繋がることも多いので、ぜひ、チェックしてみてくださいね。
パイシートとフィリングはしっかり冷ます
パイ生地にフィリングを乗せる前には、生地もフィリングもしっかりと冷やすことが重要です。生地が温かい状態だと、内部の脂肪分が溶け出してしまい、結果としてサクサク感が損なわれます。フィリングが温かい場合も同じ問題が発生します。
アップルパイのようなフルーツを使ったパイや、キッシュのように温かい具材を使う場合でも、冷却することが大切です。また、パイ生地を空焼きする際にも、焼き上がったらしっかりと冷ましてください。
パイシートにフィリングを載せたら直ぐ焼く
フィリングをパイシートに乗せた後は、迅速に焼き上げることが、パイをサクサクにする秘訣です。フィリングがパイシート上に長時間放置されると、その水分がパイシートに吸収され、期待したサクサク感を損なってしまいます。
この問題は、以前に触れた「パイシートが生焼けになる」問題にも直結します。フィリングを乗せて成形したら、遅れずにオーブンで焼き始めましょう。即座に焼き始めることが重要です。
予め十分に予熱する
パイシートを焼く前の予熱は非常に重要です。しっかりと予熱を行うことで、パイシートとオーブンの温度差を適切に保ち、理想的なサクサクの仕上がりを実現できます。
パイシートの成形が完了したら、直ちに焼き始めるべきです。そのためには、予熱を予め完了させ、成形後すぐにオーブンに入れられる状態を整えておくことが大切です。成形後に予熱を始めると、フィリングの水分が浸透し、サクサク感が損なわれてしまいますので注意が必要です。
予熱に時間がかかる場合は、成形したパイシートを冷凍庫に保管しておくと良いでしょう。冷凍された状態から直接オーブンに入れても問題ありませんが、加熱時間を少し長めに調整することをおすすめします。
フィリングの余分な水分は除去すること
パイを作る際、フィリングの余計な水分は先に飛ばしておくことが重要です。この水分が原因で、パイ生地が湿ってしまう可能性があるためです。特に、アップルパイのようなフルーツを使ったパイの場合、生のフルーツをそのまま使うと、加熱する過程で水分が出てしまい、適していません。
加熱処理を施したフルーツを使用することをおすすめします。
もし具の水分が気になる場合、いくつかの対策があります。
たとえば、
・パイ生地を型にセットした後、パン粉や小麦粉、細かく砕いたビスケット、クッキー、クラッカー、スポンジケーキなどを敷き詰めてから具をのせ、水分を吸収させる
このようにすることで、パイ生地が湿ることなく、きちんと焼き上げることが可能です。また、生焼けを防ぐ効果も期待できます。
少しの手間と工夫を加えることで、サクサクとした美味しいパイ生地を作り上げましょう。
パイ生地が生焼けでも食べられる?生焼けの見分け方など まとめ
パイ生地が生焼けでも食べられるかどうか、その見極め方と再加熱の方法について説明します。
パイ生地が十分に焼けていない状態が直接的に健康を害するわけではありませんが、原材料の小麦粉は原則として生で消費すべきではないため、注意が必要です。
パイ生地が十分に焼けているかどうかの判断は、表面が均一に焼けているかどうかで決まります。外側が美しいきつね色をしている場合、中が生である可能性は低いです。
フィリングによって覆われている部分は、型から生地が簡単に離れるか、ナイフを使ってみてスムーズに型から取り外せる場合、中が生である心配はありません。
・オーブンの下段に置いて焼き直す
・天板の上で直接焼き直す
パイ生地が思ったように焼けずに中が生の状態だとがっかりしますよね。それが原因でお腹を壊したりすると、さらに悲しい気持ちになります。
そのような事態を防ぐためには、パイ生地が十分に焼けているかどうかをきちんとチェックしましょう。中が生の場合は、さっと再加熱して、美味しく安全にお召し上がりください。
パイ生地が上手に焼けることを心より願っています。