みずみずしくて甘味のあるブロッコリーは、多くの人にとって美味しい野菜の一つです。 ところが、時にこのブロッコリーが不思議と苦く感じられることがあります。
これは、ブロッコリーに含まれる「イソチオシアネート」という成分が関係しています。 この成分は健康に良い効果を持ちますが、苦味が強くなることも。
この記事では、イソチオシアネートの詳細とともに、 ブロッコリーが苦くなりがちな状況や苦味を和らげる調理方法についても解説していきます。
ブロッコリーの苦味の原因はイソチオシアネート
ブロッコリーの特有の苦味は、主に「イソチオシアネート」という化合物によるものです。
この化合物が多くなると、辛さを感じやすくなりますが、これはブロッコリーが腐敗している、農薬が残っているわけでもありません。この成分は健康に害を及ぼさないため、ブロッコリーは安心して食べることができますが、苦味は伴うかもしれません。
イソチオシアネートとその特性
イソチオシアネートは、ブロッコリーを含むアブラナ科の植物、例えばキャベツや白菜などに豊富に含まれる成分です。
この化合物は苦みや辛みを生じ、これによって植物は虫から身を守っています。この成分は人間の健康にも好影響を及ぼし、特に抗菌効果や抗酸化作用があります。これらの効果は風邪予防や老化防止に有効です。
また、この化合物が分解されるときには、独特のにおいが生じます。これはエタノールや硫黄系の物質に変わるため、薬のようなにおいや、雑巾や漬物のようなにおいとして感じられることがあります。
腐っているわけではない
時々、ブロッコリーが通常と異なる風味を持っている場合、これが腐敗の兆候かどうか気になることがあります。しかし、もしブロッコリーが少し辛味を帯びていても、それが腐敗した証拠ではありません。
腐敗したブロッコリーは外見と匂いで判断できます。腐ったブロッコリーは通常、茶色く変色し、表面がヌメリがちです。また、腐敗した食品特有の酸っぱい匂いや異臭がするので、これらの兆候が見られたら腐敗していると判断できます。
農薬の影響でもない
ブロッコリーが特有の辛さを持つとき、これが農薬残留によるものではないかと疑うことがあるかもしれません。しかし、実際にはそうではありません。
日本で販売されているブロッコリーは、厚生労働省によって設定された農薬残留に関する安全基準を満たしていることが保証されています。安全基準をクリアしているブロッコリーでは、仮に農薬が残っていたとしても、その量は味や健康に影響を与えるほどではない微量です。
したがって、ブロッコリーが辛いか苦いと感じる場合でも、農薬のせいではないので心配無用です。
ブロッコリーの苦味の原因はシュウ酸
ブロッコリーを食べる際に苦味を感じることがありますが、これはシュウ酸によるものです。
ブロッコリーにはシュウ酸が含まれており、その量は100gあたりのシュウ酸を最も多く含むホウレン草の約4分の1です。これはシュウ酸を多く含む野菜に分類され、苦味を感じやすいです。
シュウ酸は、栄養素というより尿路結石の原因になり得る物質ですが、ブロッコリーに含まれる量では通常の食事であれば問題はありません。特別な対策を取る必要はなく、適量を楽しむことができます。
ブロッコリーの苦みが増す理由
ブロッコリーの苦みが増すのは、イソチオシアネートという化合物が過剰に生産される時です。この化合物の生成は、ミロシナーゼという特定の酵素の作用により促進されます。
つまり、ミロシナーゼが活動的な状態にあると、イソチオシアネートが大量に生まれ、結果としてブロッコリーがより苦くなるのです。
旬を逃したブロッコリーは苦い場合がある
ブロッコリーが古くなると、苦みを引き起こすイソチオシアネートがより多く生成されます。これは、空気に長時間さらされることで活性化するミロシナーゼという酵素の影響です。
新鮮なブロッコリーは、特に11月から3月の期間において、苦味が少なく、栄養価も高く、甘みすら感じられることがあります。この時期は寒いため、鮮度を保つのも容易です。
しかし、旬の時期外に市場に出るブロッコリーは、外国産や国内の遠隔地で栽培されたものが多く、長い輸送時間が必要です。その結果、鮮度が低下し、長時間の空気曝露によりミロシナーゼの働きが促され、イソチオシアネートの増加につながり、ブロッコリーは苦くなることがあります。
ブロッコリーを生で粉砕すると苦味が出る理由
ブロッコリーをそのままの状態でミキサーにかけるか、細かく切ると、イソチオシアネート生成を促す酵素「ミロシナーゼ」の量が増え、それに伴いイソチオシアネートも増加します。これがブロッコリーの苦味の原因となります。
ただし、ミロシナーゼは35~40℃の温度で活性化し、高温で失活します。したがって、ブロッコリーをスープやスムージーにする場合、ミキサーにかける前に加熱することをお勧めします。
電子レンジを使用してもブロッコリーの苦味は無くならない
ブロッコリーの苦味を取り除くためには、イソチオシアネートを分解、消去する必要があります。これを効果的に行う方法は、ブロッコリーを煮ることです。
電子レンジを使って手軽に加熱することも考えられますが、苦味を減らすためには不適切です。電子レンジで加熱すると、イソチオシアネートが分解されにくく、苦味も残りやすいです。
ブロッコリーの苦味を抑える調理法
ブロッコリーを美味しく食べるためには、イソチオシアネートの生成を抑え、ミロシナーゼの作用を防ぐことが重要です。どのように調理すればよいか、ここでいくつかの方法を紹介します。
細かく刻むなら茹でてから入れる
ブロッコリーを細かく切る際、その成分が変化し、ピリッとした味わいが強まります。特にポタージュなど滑らかな料理には細かいカットが求められますが、このときにはブロッコリーを先に茹でることをおすすめします。
茹でることで、特定の酵素が失活し、辛みを引き起こす成分の増加を防げます。加熱により苦味も軽減されるので、苦味の心配もありません。
塩ゆでにする場合
ブロッコリーを苦くしないよう調理するためには、塩を加えた茹で水で下処理するのが効果的です。古くから野菜の渋味や苦味を和らげる方法として塩が使われています。
茹でることで苦味成分は減りますが、塩を加えることでさらに苦味が和らぎ、色も鮮やかになります。適量はブロッコリーの量の1~2%の塩です。
ブロッコリーの苦味は消えたけど臭い
ブロッコリーの苦い成分を除去するプロセスでは、イソチオシアネートが分解されます。この分解により、ブロッコリーは特有の香りを発することがあるのです。
なぜ臭くなるのか
イソチオシアネートが分解されると、エタノールや硫黄系の化合物に変わります。これが原因で、時には化学薬品のような香りや漬物のような香りが感じられることがあります。
ただし、この化学反応は体に害はないものの、強い香りは食欲を減退させる可能性があります。
強い香りの食材を使って香りを和らげる方法
香りが強いブロッコリーをどう処理すればよいかというと、実は香りを完全に取り除く方法は存在しません。
ですが、他の強い香りの食材を使って調理することで、不快な香りを和らげることはできます。たとえば、ニンニクやハーブ、チーズなどの香りの強い食材を使用することが推奨されます。
また、ブロッコリーを茹でる際に塩とにんにくを加えると、より良い香りが付きます。
油で揚げると香りが良くなる
ブロッコリーを油で揚げると、香ばしくなり、香りも改善されるでしょう。素揚げするのも良いですし、フリッターのように調理するのも美味しくなります。
新鮮なブロッコリーの選び方:苦味と臭いを避ける秘訣!
ブロッコリーは健康に良い野菜です。よく食べたいけれど、苦い味や特有の臭いが気になることもあるでしょう。これらの苦味や臭いの主な原因は、イソチオシアネートという成分です。
苦くなく、臭くないブロッコリーを見つけるためには、イソチオシアネートが少なめの新鮮なブロッコリーを選ぶことが重要です。収穫時期に近く、配送距離の短い国内産のものを選ぶと良いでしょう。
新鮮なブロッコリーを選んで、本来の美味しさを堪能しましょう。